「さて、と。バスルームは先にお使いください。アメニティは豊富だと思いますが、ヨルゴード国の表記はわかりますか?」
「はい。ヨルゴード国の言語は公用語ですので勉強済みです。問題ありません」
「さすがですね。聖女様が戻る前に夕食をルームサービスで頼んでおきますけど、アレルギーや苦手なものは?」
「ありません。お気遣いありがとうございます」
リードされるまま質問に答えるうちに、ふと気がついた。
もしかして、ハーランツさんも一緒に泊まるの?
たしかにスイートルームは彼の名前で借りているし、今後の動きについて話す時間も必要だ。
だけど、出会ったばかりの男性と同じ部屋で一晩過ごすなんて心臓に悪すぎる。
ヨルゴード国までの道中で、彼は二十六歳だと聞いた。六つ歳上の彼は私よりもずっと人生経験が豊富で、なんでも知っている大人に見える。
命の恩人だからといって、気を許しすぎではないか?



