間抜けな声をあげて目をまん丸にする私を連れて、ハーランツさんは大理石の床を進んでいく。
吹き抜けの天井には大きなシャンデリアが存在感を放っており、真っ赤な絨毯が荘厳なオーラを醸し出していた。
手渡された鍵はスイートルームだ。
部屋は故郷の自室が三つは入るほど広く、大人っぽく落ち着いたデザインの家具が並んでいる。
寝転んでも余るほどのソファはふかふかで、私にとって贅沢すぎる空間であった。
神殿で民の幸せを祈り、広い草原で牧羊犬とたわむれ、ロウとじゃがいもの皮むきに精を出していた昨日までの生活とは百八十度違う。
「すみません、ハーランツさん。色々買ってくださっただけでなく、宿の予約までお世話になってしまいました」
「いえ。あなたをさらってきたのは俺ですので、お気になさらず」
ツインベッドに歩み寄った彼は剣を下ろしている。騎士団のマントをハンガーにかけたところで、青い瞳が私をとらえた。



