麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない



 深く考えずに「わぁ。あの服、素敵」とつぶやくと、ハーランツさんは金額も確認せずに、見るからに上質な衣服の購入をスタッフへ伝えていく。

 まずい。非常にまずい。

 慌てるこちらをよそにスマートにカードで会計を済ませた彼は、大きな紙袋を提げたまま路地を迷いなく歩いた。

 立ち止まった先に見えたのは、大きなホテルだ。高級な外車がロータリーに停まり、重厚なエントランスでドアマンが出迎えている。

 サハナ国では馬車しか交通手段がなかったけど、ヨルゴード国は車だけではなく機関車の線路も通っているんだ。世界が全く違うわ。


「とても綺麗。こんな豪華なホテル、サハナ国にはありません。やはりヨルゴード国の都市部は栄えているのですね」

「えぇ。ここはザヴァヌ王が出資をした国営のホテルです。国家公務員は自由に使えます。騎士団の寮は外部の人間が立ち入れないので、俺の名前で聖女様の部屋を予約しておきました」

「へぇ……えっ?」