低くくも穏やかな心地よい声だ。
挨拶にお互い頭を下げたとき、ロウが尋ねる。
「本日はどのようなお話で?」
「ひとことで言うと、聖女様との婚約の申し出です。私は使者として参りました」
「なっ、なんじゃと!?」
ロウの顔が驚愕で固まった。なんだか、どこかで覚えのある展開だ。
突然、使者が私を迎えにきて、婚約の話を持ちかける。まるで、あの人との出会いの日の話みたい。
すると、男性がフードに手をかけた。
徐々に現れた素顔に、胸が高鳴る。
「正統な血筋を受け継いでおり、体も丈夫で剣の腕も立つ。きっと、聖女様のお眼鏡にかなうはずです。愛情深く一途な……私の息子など、いかがでしょう?」
青い瞳に男性の正体を確信した瞬間、神殿の外から騒がしい声が聞こえてきた。サハナ国の民が、皆、空を見上げて沸き立っている。
ロウと共に外へ一歩踏み出した途端、大きな翼で空を切り、地上に降り立ったのは黒竜だった。
思わず駆け寄ると、黒竜は小さく喉を鳴らしてヒトの姿へと一変する。
「ハーランツさん!」



