「ええと、たしか、ヨルゴード国の騎士団は男性しか入団資格がないはずでは?」
「その通りです。ですが、騎士団は寮生活なので二十四時間護衛につけますし、任務にも同行しやすい。さらに男として暮らせば、あなたの素性をより誤魔化すことができる。一石二鳥ならぬ三鳥ではありませんか。問題ありません」
「問題大アリです!」
危ない。うまく乗せられるところだった。
男装をして、騎士になれと? 剣をまともに握った経験のない私が?
屈強な騎士団だと世界中に名の知れている組織に一般人が混じるのは、どう考えても無謀だ。
でも、ほかに選択肢が思い浮かばない。
私が故郷へ帰ったせいで大切な土地が戦火に巻き込まれたら、悔やんでも悔やみきれないだろう。
命を狙うザヴァヌ王のお膝下にいたほうが、敵の動向を探れて逆に安全なのかしら?
本心が読めない彼に対して警戒が解けない。しかし、私の命を救ってくれたという紛れもない事実がある。
それに、すらっと長い手足に服の上からでもわかる筋肉質な腕。肩幅のがっしりした男らしい体躯は、護衛としてこれ以上ないほど心強かった。
長考の末、短剣を拾う。
その行動が意外だったのか、ハーランツさんの青い瞳がわずかに見開いた。



