エヴィニエ王の意図を察したのか、ハーランツさんが黒竜の姿に変わる。
青い炎を吐いて足止めした後、すぐに硬く大きな尾でザヴァヌ王の足を払い、体制を崩して倒れ込む巨体をエヴィニエ王が魔力で押さえつけた。
「“鎮まりなさい”!」
言霊の波紋が広がり、魔物は震えながら動きを止める。
「“欲を捨て、罪を悔い、空へ還れ”!」
施設から溢れ出したのは、まばゆい光だ。地響きのごとく大きな断末魔の後、ザヴァヌ王の体が砂になって崩れていく。
さらに、施設に溢れかえっていた邪悪な魔力が、エヴィニエ王の神聖な魔力によってかき消されていった。
これは夢じゃない? 私、ちゃんと聖女の役目を果たせたの?
ラグネ惨禍の首謀者を討つつもりだったハーランツさんが手を汚さずに、元凶のザヴァヌ王が浄化されて消えたのだ。
そして、力を使い果たした私の目に映ったのは、たくましく凛とした美しい黒竜の姿だった。



