自分に向けられていないとわかっていても、震えるほど怖い。
こんなにも冷たい表情の彼は初めて見た。
そのとき、ザヴァヌ王の体からエヴィニエ王の魔力が弾け、施設の天窓を砕く。
雨のように降り注ぐガラスから私を守ったハーランツさんは、表情ひとつ変えないものの、静かに沸点を超えていた父を止められずに眉を寄せた。
「ぐわぁぁぁっ!」
苦しみに悶えたザヴァヌ王の体が暴走した魔力に包まれて、地面に張り巡らせた禁忌の魔法陣から次々と合成獣が現れる。
やがて負荷がかかりすぎた魔法陣は砕けたが、生み出した合成獣を全て吸収したザヴァヌ王は、人間とは思えない禍々しい魔物の姿に変貌していた。
これが、禁忌を犯した者の末路なのね。
まずいわ。すでに自我を失い、魔力に思考を支配されている。このまま城の外に飛ばれたら、被害は計り知れない。
「ミティアさん」
名前を呼ばれて顔を上げた先に、エヴィニエ王の青い瞳が映った。
「あれはもうヒトには戻れない。魔法陣が割れた今なら、君の力であの化け物を浄化できる」
「そんな。立っているのもやっとな魔力に圧倒されているのに?」
「心配いらない。私と息子が力を貸そう」



