麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない



 勢いよく蓋を開けた暴君は、一気に聖水を飲み干した。みるみるうちに強大な魔力が彼の体を包み、力がみなぎっていく。

 しかし、数秒後にザヴァヌ王の顔が歪んだ。

 大きく体が脈打ち、自分でも訳がわからないといったように胸元を押さえる。


「ぐっ……、かはっ……!」


 突然苦しみだしたザヴァヌ王に絶句した瞬間、エヴィニエ王が冷ややかに言い放つ。


「救いようのない男だ。人間ごとき器で、私の強大な魔力が抱えきれるわけないだろう」

「くそ……! この俺を騙したのか」

「気づかせてやっただけだ。たった少量でこの醜態だと。貴様が私を殺したとしても、奪った魔力を制御できずに絶命する」


 ザヴァヌ王の赤い瞳が、こぼれそうなほど見開かれた。

 毒ではない。目の前で魔力を込めるのを見た。今さら姑息な真似は真似はしないはず。

 エヴィニエ王は、初めから、不老不死の魔力が人間に抱えきれないパワーだとわかっていたんだ。

 その上でザヴァヌ王をあしらい、遠ざけるつもりだったけれど、妻やラグネ国の白竜達を利用されて、長年の戦いに終止符を打つと決めた。

 施設に響いたのは、怒りと軽蔑に満ちたエヴィニエ王の声である。


「欲に溺れた愚帝が。身の程を知れ」