最初で最後の“見て見ぬふり”。
抜いた剣をこちらではなく合成獣に向ける騎士達は、団長の意思に納得したようだった。
王に仕える騎士としてはあるまじき行為であるものの、口にしないだけで、おそらく長い間暴君への不信感は心のどこかにあったのだ。
誰もがヨルゴード国の明るい未来を待ち望んでいる。
ハーランツさんとともに城へ乗り込むと、中には合成獣の気配がなかった。ザヴァヌ王の邪悪な魔力も感じない。
この前来たばかりなのに、迷路のごとく入り組んだ廊下は相変わらず複雑で、自分の現在地でさえ分からなくなる。
やがて、ハーランツさんの導きもあり、見覚えのある大きな扉の前に来た。
勢いよく開いた先にあったのは、悠然と玉座に腰掛けるシルエットだ。
「当分会わないと言っていたのに、早い再会だな」
頬杖をついて出迎えたのは、エヴィニエ王である。神聖な空間は穢れすらなく、彼の王族らしいオーラだけが漂っていた。



