アルヴ国で養生する間に、ザヴァヌ王の私室から盗みだした鍵型で鍵を作りだせたらしく、ハーランツさんは研究所に忍び込む気満々である。

 そのとき、カウンター席近くの掲示板に貼られた紙を見て、思わずスプーンを持った手が止まった。

 あれは、ミティア=アルメーヌとハーランツ=レオポルトの指名手配書! ご丁寧に顔写真付きで、高額の懸賞金までかけられているじゃない!


「まずいですね。こんなところまで情報が行き渡っているとは」

「暴君は仕事が早いな。ここも長居は出来なさそうだ」


 ザヴァヌ王に剣を向けたハーランツさん共々、私たちは完全にお尋ね者となったようだ。

 素早く食事を終えてダイニングバーを出ると、辺りは雪が降り始めていた。見渡す限りに森が続いている。

 こんな自然豊かな土地に研究所なんて似合わなそうだけど、本当に存在するのかしら。

 疑問に思いながらも、コートのフードをまぶかに被って歩きだすハーランツさんの背中を追った。

 雲で日光が遮られた森は薄暗く、ふたり分の体重で雪が沈む音だけが聞こえている。