訳がわからずとも、イグニス副団長は至って冷静だ。抵抗するよりも、不在の間の出来事を理解するのが先である。
やがて、おとなしく連れられるまま、武闘会の会場となった広い闘技場にたどり着く。
イグニス副団長に降ろされて周りを見回すと、観客席には多くの騎士が座っていて、フィールドの中央にはオルデン団長とザヴァヌ王が立っていた。
まるで見せ物状態だ。
「前へ出ろ」
低く尖った声が響く。
ザヴァヌ王を目の前にするのは初めてだ。冷え切った深紅の瞳が私をとらえて、背筋が震える。
「貴様は公務に選抜されたのにも関わらず、警備エリアを放って職務を怠慢したようだな」
「いいえ。私は警備を怠ったわけではなく、避難誘導に加えて、合成獣の討伐に向かったのです」
「言い訳は無用だ。反逆者の主張など聞く気はない」
なんて高圧的な態度なの。
彼が暴君と言われる所以がわかった。彼はこうやって、自分の気に入らない者を次々に処刑してきたのだ。



