「目の前にいるミティアが夢じゃないと確かめたい」
熱を帯びた視線に貫かれる。キスの予感だ。ぎこちなく目をつぶる私に、至近距離で止まった彼の吐息を感じる。
触れるだけの口付けは、甘い余韻を残していった。
「奪っておいて今さらだが、嫌じゃなかったか?」
「あ……えっと、ハーランツさんなら、何をされても」
「ああ、そうだ。思い出した。聖女様は無自覚に煽ってくるんだった」
小さくため息をついた彼に、首を傾げて様子をうかがう。
心臓の鼓動が鳴り止まない。信じられないくらい体が熱くて、自分が自分でなくなりそうなほど緊張しているのに、不思議と嫌じゃない。
「今のは敬愛と忠誠のキスです。もし、身も心も奪われる覚悟があるなら、俺に命じてください。……欲しいと言えば、望むままにしてやる」
敬語混じりのセリフは、護衛の騎士から素の彼への変化を感じるようでぞくぞくする。
「命じなくても、おねだりでいいんですよね……?」
『俺は言霊の魔力がなくても、あなたのおねだりなら、なんでも言うことを聞いてしまう男だから』



