「すまない。一方的に感情をぶつけてしまった」
あなたが謝る必要はないのに。声を出したら良くないかな。なんて言えばいいかもわからない。
「言霊の魔力もないのに、言動を縛らないよ。名前を呼んでくれないか。俺はあなたの声も好きなんだ」
ふたりきりの部屋に、ひどく優しい声で懇願が響く。
顔を覗き込んで答えを待つ彼を、そっと呼んだ。
「ハーランツ、さん」
「うん」
「信頼を裏切ってしまって、ごめんなさい」
「だめ。時計塔で、許さないと言っただろ」
目を見開くと同時に、頬の輪郭を指でなぞられる。
「この先、年老いて死がふたりを分かつまで、俺の側にいると誓ってくれ。そうじゃないと許せそうにない」
頬をなぞる指を手で包んだ。驚いた表情が視界いっぱいに映る。
「私もずっと、愛するハーランツさんと一緒に生きていきたいって伝えたかったんです」
素直に口にした言葉は、彼にとって言霊の魔力よりも破壊力のあるセリフだったらしい。
一方的な口説き文句のはずが、想像以上の答えを返されて、一瞬理解が追いつかないようだ。



