「あなたは、俺にだけは言霊の魔力を使わないと言っていただろ」
『私は、聖女の力を私欲には使いません。それに、ハーランツさんには……ハーランツさんにだけは、今後なにがあっても言霊の魔力で縛りたくないんです』
過去の会話が頭によみがえる。
「ミティアの願いなら、命令なんてなくても全て聞くつもりでいた。でも、あのとき、初めて俺の行動を縛った瞬間、愛する女に自分を犠牲にして助けられた俺の気持ちがわかるか?」
彼の声は震えていた。
幼い頃に言霊で命を救われ、聖女を亡くしたハーランツさんに、決してしてはいけないことをしたのは私だ。
過去のトラウマをなぞる行為は、いくら責められてもおかしくない。
「二度とあんな真似はするな……お願いだから」
首元に抱きついて何度もうなずく。
ごめんなさいと謝りたくても、言葉では足りない気がした。何も言わないでいるのが、心が伝わる唯一の方法なのだ。
どのくらい抱きしめあっていただろう。
ハーランツさんがゆっくり腕の拘束を解いて、私の肩に手を置いた。腕の長さぶん距離をとると、傷心した顔が目の前に映る。



