「この傷じゃあ飛べそうにないが、地上に落ちる瞬間に竜になれば、生身の体で墜落するよりマシだ」
「それでは、あなたの素性がバレてしまいます」
「構わない。たとえ国に追われたとしても、ミティアだけは守ってみせる」
力強い言葉に胸が打たれた。
迷いなんてないんだ。私と会ったときからこの人は、いつだってまっすぐに生きてきた。
聖女の生まれ変わりだとか、大事な愛弟子だからとか、それ以上に私そのものを見てくれている。
そんな彼になにを返せた? 今一番思うのは、彼に死んでほしくないということ。
一緒にいられなくなるのが嫌だ。自分を大切にしないのが悲しい。復讐以外にも目を向けて、この先幸せになってほしい。
それは、聖女の慈悲とは違っていた。
単に相手の幸福を願うのではなく、あわよくばその隣に自分が居たいと願ってしまう。
こんなときに気づくなんて、馬鹿ね。
私は、命を投げ打ってまで守ろうとしてくれる彼が、この世で一番大切で、愛をあげたい人なんだわ。
ハーランツさんの体を預けるレンガが、わずかに音を立てた。
だめだ。このままでは、彼を巻き添いにしてしまう。



