その瞬間、足元のレンガが勢いよく崩れた。
もともと廃墟と化していた時計塔が、白竜の攻撃による衝撃と地響きによってヒビが入り、倒壊し始めたらしい。
崩れたレンガの壁が地上に降り注ぎ、体が重力に引っ張られる。
まずい、落ちる!
死を覚悟すると同時に手を取られた。手首を掴んだのはハーランツさんだ。
崩れかけた時計塔で宙ぶらりんになり、地面を這う体勢でハーランツさんがなんとか引き上げようとした。
しかし、変に重心を傾けると崩落の危機があり、ふたり揃って数十メートル下まで落ちてしまう。
力を込めれば込めるほど体力が奪われ、深傷を負った彼は思うようにいつもの力が出せないようだ。
繋いだ手から、赤い雫がつたう。
「ハーランツさん! 私はいいですから! 傷が開いてしまいます」
「俺が離すと思うか? 二度も聖女様を死なせてたまるか」
過去の惨禍に囚われる彼は、自分を犠牲にしても私を助けるつもりだ。でも、体力的に難しい上に、救助が来るまで掴み続けるのも不可能に近い。



