「まだ聖女の力は使うな! こいつには確かめたいことがある!」
こちらの考えを察したハーランツさんが声を上げた。
座り込んで戦況を見守るしかできない。
『グルァァァ……!』
そのとき、白竜の鳴き声にハーランツさんの動きが止まった。竜人族にしか分からない言語は、やりとりが翻訳できず、もどかしい。
「く……っ!?」
一瞬の隙を突かれ、白竜の鋭い爪が青い服を切り裂く。初めてハーランツさんの顔が歪んだ。
闇夜に鮮血が飛び、血の気が引く。
「“動きを止めなさい”!」
片膝を付く彼が視界に入り、無意識に叫んでいた。戦いのタイムリミットだ。これ以上静観していたら、ハーランツさんが持たない。
「“白竜よ、眠れ”!」
巨体が体を震わせて展望台に横たわる。地響きがするほどの衝撃だ。
言霊の魔力で縛ったはずが、倒れた白竜の体が光の粉になってサラサラと上空へ消えていく。
まるで浄化されているみたい。この白竜は、一体なんだったの?
戸惑いつつも、優先すべきはハーランツさんだ。急いで駆け寄ろうと立ち上がる。
「きゃっ!」



