仕組まれていたなんて微塵も思わなかった。恐ろしい合成獣はザヴァヌ王のしもべだったんだ。
考えてみれば、突然婚約の話が出て迎えに来られたのも、迂回路を探しに行ったはずの騎士たちが姿を消したのも不可解だった。
おかしいなと感じていたのに、殺されかけるまで気づかなかったのは私の落ち度だ。
「でも、一体どうしてこんな策略を? 私の命を狙うメリットがザヴァヌ王にあるとは思えません」
すると、ハーランツさんは顔をわずかにあごを引いて私を覗き込む。
「メリットなら大いにあります。少し考えれば、答えに辿り着くはずですよ」
「……まさか、言霊の魔力が関係しているのですか?」
無言で目を細める仕草は肯定だった。
彼は興味津々といった様子でこちらを見つめる。
「俺もこの目で見るまでは半信半疑だったんですが、本当に言葉で相手を操ることができるんですね。あの獰猛な合成獣を追い返したときはしびれました」
ハーランツさんは、事の顛末をすべて見届けていたらしい。馬車に乗っていたときには気配すら感じなかったけれど、一定の距離を保ってこちらの動きを監視していたのだろうか。



