つい、目を丸くする。
帰る手段がないという意味? それは非常にまずい。
しかし、ハーランツさんは少しかがんで視線を合わせ、楽しそうに続けた。
「雨雲が夜中の間に逸れたせいか天気は良いし、ミティアが良ければ、とっておきの方法で帰らないか?」
とっておきの方法だなんて言われれば、すごく気になる。
胸を高鳴らせる私に、最高の誘い文句が飛んできた。
「ミティアだけの特等席をくれてやる」
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「わぁっ! 高い!」
真っ暗な翼が空を切る。
羽ばたく度にぐんと勢い付いて進む黒竜に、ドキドキが止まらない。
ハーランツさんが用意してくれた特等席は、自身の背中だった。彼は私が背を伸ばして手を高くあげても届かないほど大きな黒竜である。
硬いウロコと鋭い爪、尖った牙は力強く、青い瞳に見つめられるだけで金縛りにあったようにその場から動けなくなるほどの迫力だ。
凛々しい竜の姿は、人間の姿と負けず劣らず、惚れ惚れするほどカッコいい。



