廃墟で告げられたセリフが頭に響いた。
ゆっくりでいいんだ。今は、まだ。
ハーランツさんがくれる気持ちと同じ熱になるまで、真摯に向き合っていこう。
今までにない距離で抱き寄せられ続けている状況に落ち着かない私は、頭の回転が鈍る中、彼に問いかける。
「そういえば、ラグネ国の住民は竜人族だと資料で読みました。ということは、ハーランツさんも竜の姿になれるのですか?」
里で私たちを出迎えた青年も、白い竜の姿をしていた。
「見たいか?」
穏やかな眼差しで尋ね返した彼は、襟元をわずかにはだけさせた。
青い瞳が光ると同時に、胸元から首にかけて黒いウロコが浮かび上がる。
すごい、本物だ……!
里の皆は白い竜であるが、ハーランツさんは母方の遺伝で黒い竜になれるそうだ。
目を輝かせる私に、彼は微笑む。
「変化をすると別館に入りきれなくて屋根を吹き飛ばすから、今日はここまでな」
「そんなに大きくなれるのですか?」
「一度、見ただろう? 谷に落ちる馬車を爪で掴んだのを覚えていないか?」



