「ミティア」
薄く形の良い唇が名前を呼ぶ。
聞きなれた響きなのに、彼が口にするだけで特別に感じるのはなぜだろう。
「顔が赤い。呼んだだけで照れられると困るな。俺までうつる」
「ふ、普通にお話しされると、破壊力が……」
「おかしなことを言うんだな。ミティアがおねだりしたんだぞ」
これは誰? 今、目の前にいるのは、本当に他人を寄せ付けない謎多きハーランツさんなの?
酔っているんだとしても、直球のセリフが嘘ではないと伝わるから、余計にドキドキする。素の彼は、ひどく心臓に悪い。
愛とか恋とかよくわからなかったけど、ハーランツさんが他の誰とも違う存在だと実感する。
初めての感情に振り回されて、自分の気持ちが整理できない。くすぐったくて、心が弾けそうなほど高揚して、とろけそうなほど甘い。
『聖女様はそのままでいてください。いずれ自覚する時が来るまで、俺はあなたの側を離れませんから』



