麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない


 たくましい片腕が背中に回され、そのまま軽く抱き寄せられる。

 暖を取るだけの距離ではない。

 私は言わずもがな体温が高いし、彼もお酒が入っているせいか、触れた肌が温かかった。

 こんなにも無防備に近づいた夜は初めてだ。

 私以上に適切な距離感を意識していたはずの彼の予想外の行動に、甘くむず痒い感情で胸がいっぱいになって、体の自由が奪われる。


「ハーランツ様は本当に心が読めません。今、何を考えているんですか?」

「そうですね……“聖女様は誰にでも平等に笑いかけるけど、そんなあなたが俺だけに見せる色んな表情を暴いてやりたい”、とか」

「またからかっていますか? それとも酔ってます?」

「どうだろうな。でも、冗談は言いませんよ」


 ふいに、頬に大きな手が添えられる。愛でるような手つきで、長い指が顔の輪郭をなぞった。

 至近距離で見えた表情は軽口も叩けないほど真剣で、力強い視線に射抜かれそう。

 わずかに赤らんだ頬が、酔いに任せた戯言(たわごと)ではないと示していた。


「……あなたを甘くみていた」

「え?」

「利用しようとしていたのに、こんなにも情が湧くとは思わなかった」