無言は肯定だった。
お互い向かいあわせになり、ただ見つめ合う。悲しい傷を共有しているはずなのに、ハーランツさんだけが過去に囚われている。
「俺は、あの男を殺すために騎士団に入ったんです」
闇深く冷たい殺気が瞳に宿った。
物腰柔らかな彼から時折漂う哀愁と、世の中を達観した態度、そして触れたら壊れてしまいそうな繊細な悲しみは、全てラグネ惨禍が原因だったんだ。
「私を助けたのは、私が聖女の生まれ変わりだったからですか?」
「始めはそうでした。二度も見殺しにしてたまるかって。むしろ、聖女の力を利用してあの男を葬る手助けをしてもらうつもりで、あなたをさらったんです」
初めて語られた本音は、想像もつかないものだった。
不思議と心は軽い。頭のどこかで、ハーランツさんが私の力を利用するつもりでかくまったのを認めていたのだろう。
しかし、ハーランツさんが秘めていた復讐の心を知って、とても辛くなる。
きっと、ひとりでヨルゴード国の騎士団に飛び込んでから、様々な苦悩があったはずだ。



