遠い目をした後、彼はそっと続ける。
「昼間、廃墟を見たでしょう? あそこは、もともとラグネの民が暮らしていたんです。二十年前の事件で国が滅亡し、多くの命が散って、生き残った者がこの隠れ里を作りました」
悲痛な話に胸が痛んだ。
考えてみれば、この里の住民は長老以外ハーランツさんより歳下か同い年ばかりだ。上の世代がごっそり抜けている。
二十年前、幼い子どもだった皆を長老が連れてこの里を開いたのだ。
前世のことは何も覚えていないけど、廃墟の神殿を見て涙が溢れたのは、私の中に宿る聖女の魂が共鳴したからなのかな。
ふと、頭の片隅に記憶のカケラが光った。
それは、寮の自室で見た手書きの解読文だ。
「あの、ハーランツさんのおっしゃる二十年前の事件を“ラグネ惨禍”というのでしょうか」
そのワードを口にした途端、彼は目を見開いた。私からその話題が出るとは予想外だったのだろう。



