余裕の態度を崩さない彼は、集まって来た里の住人へとまっすぐ視線を向けた。
「残念ながら、彼女とは皆が想像している関係じゃない。でも、俺の大切な人なんだ。もてなしはいらないが、里の仲間と同じく大事にしてくれ」
真摯に訴える声が心に響く。
私を大切な人だと言ってくれた。彼との間に感じていた距離が、すっと消えてなくなった気がする。
存在を遠く感じていたのは私だけで、ハーランツさんはずっと私をそばに置いて大切にしてくれている。
『好奇心の詮索は身を滅ぼしますよ。闇を知れば知るほど、あなたは危険にさらされてしまいますから』
出会った頃に言われたセリフが頭の中によみがえった。
きっと、全てを語らないのには理由があるんだ。彼は見えないところでも私を守ってくれているのかもしれない。
「ハーランツ、帰ったのか」
門の向こうからしわがれた男性の声が響く。
木を削って作られた杖をついて現れたのは、立派な白い髭を蓄えたおじいさんだった。里の人々は、彼の姿を見た途端に背筋が伸びる。



