麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない

**


「ああ、まずいですね。聖女様、被害の状況は?」

「靴の中までびっしょりです」


 数十分後、私たちは無人の駅に立っていた。

 なぜ髪も服も濡れているのかというと、突然の悪天候に見舞われ、どしゃ降りの雨に当たったからである。

 すぐに大きいトレンチコートを頭から被せられて走ったものの、傘無しではしのげないほどの暴雨は容赦がない。

 濡れた黒髪をかき上げたハーランツさんは、顔をしかめて空を見上げる。


「だいぶ雨足が強いな。ヨルゴード国は深夜ごろから雨の予報でしたが、国境を越えたこの辺りは夕方から低気圧に覆われたようです」

「風も強いですし、しばらく止みそうにないですね」

「えぇ。この様子だと、日帰りの列車が主要な駅しか運行しないかもしれません」


 見回したところ、近くに休める町や村はない。帰るための交通手段がないのなら、野宿をするしかないのかしら。

 ここに来て、予想外のトラブルが起きてしまった。秋の夕暮れは結構肌寒く、濡れた服が徐々に体温を奪っていく。

 このまま駅で寝たら、風邪をひいてしまいそう。