含みのあるセリフに小さく胸が鳴った。
恋愛対象として言われたわけではないと理解していても、常に他人と一線を引く彼が側に置くのを許した存在が私だけのような気持ちになって、嬉しい。
甘い雰囲気はすぐに消えたが、心地よく焦ったい緊張感は続いていた。
彼は花束を抱えて立ち上がり、私の手を握って引き上げる。
連れられるまま歩いてたどり着いたのは、廃墟の奥にある小さな石碑の前だった。
「今日は慰霊碑に献花をしに来たんです。毎年必ず、冬が来る少し前、忘れもしないこの日に」
しゃがんで花束を供えたハーランツさんの横顔は、儚く映る。
「この場所には、俺が救えなかった魂がたくさんあるから」
聞き逃すほどの音量であったが、真剣な顔の彼をやけに遠く感じた。
過去になにがあったのかはわからないけれど、ハーランツさんとここに眠る魂が、少しでも楽になって欲しい。
彼の隣にしゃがんで祈りを捧げる間、彼の穏やかな瞳がなぜか泣きそうに見えたのは、きっと気のせいだ。



