麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない



 次の瞬間、背後でバサリと音がした。振り向いた先に、目を丸くしたハーランツさんがいる。

 地面に落とした花束を拾う様子もなく、ただふたりの視線が交わった。

 鉢合わせに動揺して、なにも言えずにいたとき、彼は無言でこちらに歩み寄る。

 吸い寄せられるように頬の輪郭をなぞられて、呼吸が止まった。


「……ハーランツ、さん?」


 まっすぐこちらを見据える青い瞳に、自分の情けない顔が映る。

 ガラス細工に触れる手つきで私の涙をぬぐった彼は、いつもの余裕たっぷりで飄々(ひょうひょう)とした彼ではない。


「触れたら消えてしまう幻かと思った」


 つぶやきが聞こえる。瞳の奥に感情を揺らして、込み上げる熱い想いを抑えているようだった。

 ひとつに縛った髪からほどけた後毛を撫でられ、胸が甘くうずく。


「涙が止まったら、お説教ですよ」


 ああ、どう説明しよう。

 普段より少し低く告げた彼の圧に、観念して頷いた。