だが、ただの野生動物ではない。獅子の胴体に狼の頭。蛇の尾が意思を持ってうごめいている。
あれは、一体なに!?
自然界の繁殖ではあり得ない造形だ。まるで、さまざまな猛獣同士で人工的に錬成された合成獣みたい。
動揺が抑えきれず思考が停止した途端、合成獣がこちらに向かって飛びかかった。
逃げるように馬が走り出し、御者が不在のまま馬車が進む。
「ま、待って! 嘘でしょう!」
想像を超えた展開に、血の気が引いた。道の先は土砂崩れで行き止まりになっているはずだ。
しかし、予想と現実は異なっていた。
通行止めだと聞いていた道はどこまでも続いていて、馬が止まる気配がない。それどころか、迂回路を探しているはずの使者は影も形も見当たらないのだ。
どういうこと?
雨も気にせず、窓を開けて顔を出す。前方に広がる崖を見た瞬間、馬は即座に足を止めた。
身の危険を感じた私は、背後から迫り来る合成獣に向かって叫ぶ。



