「俺が我慢していればいいんだって、本音を隠して笑顔を顔に貼り付けたりしてね」
「……先輩がですか?」
「うん。本当の自分を隠すって息苦しいよね、毎日溺れてるみたいだった」
「…………」
「けど、ある時勇気ある子に助けられてね。そこからかな、ハッキリ告白を断って、無闇矢鱈に女子に優しくしなくなったのは」
「勇気ある子?」
「うん。今でもずっとずうっと感謝してるんだ」
空を見上げていた先輩は、私に視線を移した。
その表情はとてもすっきりしていて、きっと過去の先輩を助けた勇気ある人は、先輩の中で今でも大きな存在なんだとすぐに分かった。
先輩は、ブラウンのキレイな瞳を輝かせ、口を開く。
「大丈夫。奈湖には俺がいるよ、息を吸おう」
その言葉は、恐れることはない、変われと私の背中を押しているようだった。
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