チラッと教室のドアを見た双葉は、いっそう笑顔を輝かせた。
「蕾! 恋木くんが来たよ!」
誘われたように、わたしも首を動かすとスクールバッグを肩にかけてかったるそうに教室に入った恋木くんの姿があった。
「岡崎?」
「あぁ、えっと……おはよ恋木くん」
軽く手を振りながらわたしが言うと、恋木くんも口の端を優しく上げながら言ってくれた。
「おはよう岡崎」
恋木くんがわたしの方へ近づいてくるたびに、わたしの心臓はどんどん落ち着きをなくしていく。
……待て待て、恋木くんはわたしに用があるんじゃなくって。席が隣だからなだけなのだ。
そう言い聞かせても、なかなか心臓がいうことを聞いてくれない。
……ああー、もう厄介だな!
「ねぇ……」
「あっ、わたし、ちょっと連絡しなきゃいけないことあるんだったー」
「え!」
心臓のことを忘れようと、双葉に適当な話を振ろうとしたけれど、まるで逃げるかのように双葉はご機嫌で自分の席へと戻っていった。
……嘘でしょ、このうるさい心臓はどうしたらいいの?
「ねぇ岡崎」


