大人になってもまた君と


「うぅっ……」
「呻いても無駄だぞ。そんなの可愛いだけだからな」

しれっと言い放つ彼に抗議の呻きを上げるも軽くいなされ、普段は絶対に言わない言葉を易々と口にした。

私の反応を見て遊んでいるだけで、実際は私のことを可愛いなんてこれっぽっちも思ってないってことは、頭でよーくわかっている。
それなのに、単純な私はそれでも嬉しくて、慣れない言葉に心臓が加速した。

「目が合わなくなってきたな……ふっ。恥ずかしくて照れてんだろ」

私とは対照的に、見透かした言葉で余裕のある素振りを見せる健斗。

全部、健斗の思いどおりでムカつく……。
落ち着け、私……平常心、平常心。
ドキドキなんかするな……はやく、治まって!

そうやって必死に自分の心と戦っている中、つつっ……と。

「こっち、見ろよ」

羞恥でピンク色に染まった頬を彼の大きな手がゆったりと這って、落ち着こうとしていた心がかき乱される。

「なぁ、今自分がどんな顔してるか、わかってんの?」

そう言った彼は不機嫌そうに眉を寄せていて、さっきまでの機嫌の良さは影すらも見当たらない。

私の顔はそんなに機嫌を損ねるようなものなの?

「ほっぺたをこんなに赤くして」

「んっ……」

「酔いでうっすら潤んだ目で、物欲しそうにこっちを見つめて」

「ち、がう……」

私の目から視線を外した彼は、黒から茶髪へと変わった私の髪をさらりと梳いて弄ぶ。

その感覚に、同じように長い髪に触れられたあの卒業式の日が思い出されて、胸がきゅっと締めつけられた。

あの日は確かこの後、逃がさないとばかりに頭を固定されて……キス、されたんだった。