「俺はこっちの方が好き」


距離を詰められ、ぎゅっと抱きしめられた。瀬尾の匂いが強くなる。



「星名さ、前より顔色良くなったよ」

「…よく寝れてるから」

「ふぅん。じゃあ俺のおかげってことだ」



その通りだ。けれどそれを瀬尾本人に伝えるのはなんだか悔しくて「別に、」と返すと、瀬尾はふは と息を吐いて笑う。



「星名はツンデレだなー」

「…はあ?バカじゃないの」

「星名」

「なに…」

「気付いてないとでも思ってんの?だとしたら星名の方がよっぽどバカだよ」



​───最初から、ずっと。




ーー星名の心臓、いつもバクバクうるさいし

ーー寝てる間、自分からくっついてきてるのは星名の方だけど

ーー『瀬尾』って、寝言言ってる、いつも



私が隠したつもりだったものは全部、瀬尾にはお見通しだったのかもしれない。