瀬尾も私と同じなのかと思って聞いたら、「家出なんかしねーよ。好きだから居るだけ」って言われてしまって、返す言葉に困った記憶がある。


まさか瀬尾がいるなんて想像もしていなかったけど、それでも、あの時の私は瀬尾に会ったことで救われたのだった。



瀬尾と過ごす夜はあっという間だった。

小鳥の鳴き声が聞こえ始めた頃に、「じゃあまた数時間後に」なんて普通とは言い難い言葉を交わして別れる。



その日から、寂しい夜は瀬尾がいることを信じてこの公園に足をはこぶようになった。

瀬尾が本当に『好きだから居る』という理由だけで毎日この場所にいるのかは分からないけど。




「瀬尾っていつ寝てるの」

「学校」

「ダメじゃん」

「じゃあそういう星名はいつ寝てるんだよ」

「…朝方、少しだけ」




あの家じゃもう眠れなくなってしまった。

毎日深夜に歩き回って、公園に辿り着いて、瀬尾と朝方まで話して。そうやって夜を早送りするしか方法がないから。眠ることが出来るのは、目をつぶっても真っ暗にならない朝だけ。




「星名」

「ん?」

「お前、俺ん家来る?」

「……ん?」

「俺ん家。来る?」



瀬尾の言っている意味がわからなかった。

「その顔可愛くない」と言われ、伸びてきた瀬尾の指がぎゅっと頬を摘む。その可愛いくない顔の頬を伸ばして更に見苦しいものにしているのは瀬尾だぞ、と冷静にそんなことを思った。




「俺が子守唄歌ってやってもいーよ?」



瀬尾と私の関係って、なんだろう。