夜の早送り







「ね、今から俺が言うことに正直に答えて」



瀬尾が言った。頷く暇も与えられないまま彼が言葉を続ける。



「星名が眠れるようになったのは俺のおかげ?」



瀬尾の体温が落ち着くから、あっという間に私は眠りにつける。夢も見ないまま、目覚めたら朝になっている。「おはよ」と言って目を擦る瀬尾が、私は嫌いじゃない。



「星名は俺のこと、男としてみてくれてる?」



私を包む彼の身体が、男の子を感じさせてくる。
低すぎない掠れた声「星名」と呼ばれるのが、私は嫌いじゃない。



「星名」

「……、」

「俺のこと、好き?」





瀬尾の行動や言動、共に過ごす時間が嫌いじゃなかった。瀬尾に包まれて眠る夜も、私は、嫌いじゃない。


本当はきっともう気付いていた。

他の子に同じように触れていることを想像して悲しくなるのも、瀬尾が私と同じだったらいいなって思うのも、瀬尾にドキドキしてしまうのも、全部。



「星名、…無言は肯定だって、どこかで聞いたことない?」

「…、知らない」

「ね、星名」

「……、」

「今から俺がすること、嫌なら突き飛ばして」



暗闇の中、瀬尾の双眸と目が合った。