「───…なにそれ適当じゃん」




バッと顔を上げれば、わたしとまったく同じ反応をしている人がいる。


ポタリポタリと大粒になって両目から止めどなく溢れていて。

いびつで、狂っていて、歪んで仕方がない。



「……3つ、ですか、」



レジ横にあるよく分からないガム。

それを買っていく人なんて、わたしは彼しか知らなかった。


そして必ずその人は3つを購入して、小銭なんか出さないところ。



「…いや、もう2つでいいよ」


「…120円……です」



それなのに2つ。

そして、小銭がちゃんと出された。


変わってない。
変わってるけど、変わってない。

少し髪が短くなっていて、相変わらず整っていて女の子みたいで。



「…もう俺と涼夏の2人分で…いいんだって」



3つ購入していた理由はそういうことだったんだと、1年越しで知ることになろうとは。


遅いよ先輩、遅すぎる。


やっと今になって涼夏として見られるなんて…たくさんたくさん待ったんですよ。