宇佐美 大介だったか。

2学期からの新米教師であり女子生徒からも人気、生徒との距離も近い男。


「宇佐美が下手なことしようとしたら止めて」と、周から言われていた。


ったく、面倒くせぇな。



「先生、わたし…すずじゃない。“大ちゃん”のうしろ追いかけてる“すず”は、もうどこにも居ないよ」



向かおうとした俺の足はピタリと止まった。


3学期から絡むようになって、今では後輩っつーよりは妹みたいな感じで。

美容室にも定期的に現れるようになって姉貴にカットしてもらって。


あれ以来ずっとショートヘアを貫いている南。



「だからもう心配しないで。本当に無理なときは自分からちゃんと言うから」



そのまま涼しい顔をして、女子生徒は男の前から去って行った。


あれはもう振られたな宇佐美。

確実にその光景にしか見えなかった。



「…周、あいつなら大丈夫そうだ」



お前が居なくても俺が見張ってなくても、たったひとりで立ち向かえるらしい。

そんなメールを隣町へ引っ越した幼なじみへと適当に送って。


俺は非常階段の先へと。