心理カウンセラー。

俺はいつかそんなものになりたいと思った。

それは彩を失ってからじゃない。


涼夏に出会って、どんどん変わってゆく後輩を見ていたときから。



「彩のこと、好きになってくれてありがとう」



どうしてか俺は、このお母さんの言葉はまんま彩の言葉なんじゃないかって思ってしまう。



『あまねくん。私のこと、好きになってくれてありがとう』



そんなの俺もだよ。

俺のほうこそ、ありがとう───…。



『このガムって美味しいの?』


『え、』


『必ずあるじゃん、コンビニのレジの横に』



俺はポケットから3つあるうち、1つのガムを取り出して墓場に置く。



「彩、これね、俺が最近ハマってる好きなものの1つ。気が向いたら食べてよ」



ガムなんて彩は嫌いかもしれないけど。

それに味もコーラ。
炭酸系は苦手だったよね。


でも、お前に知っててほしいから。




「───…やっと、晴れた、」











とある先輩の、歪んだ雨空。