とある先輩の、歪んだ狂愛。





過去形で伝えたその意味は、きっとお母さんには伝わっているはずだ。



「…命を絶つ前日の夜、彩があなたの話をいつも以上にしてくれたの」



母親ながらにおかしいなぁって思ってたんだけどね───と、少し寂しげに微笑んだ。


でも母親だから普段聞けない娘の話を聞きたかったんだろう。

そのとき、彩はどんな顔をしてどんな声で俺の話をしてくれてたんだろう。


だから俺も黙って続きを待った。



「“あまねくんに救われた”って、“隣に座ってるだけで本当に楽しい”って言ってたわ」


「…俺は…なにもしてないです。…なにも…出来ませんでした、」


「そんなことない。ただ隣に居てくれるだけで、彩にとってどれほど幸せだったことか」



俺はこんなときでも、いつかに涼夏が言ってくれた言葉を思い返していた。



『…お祭りに限らなくても、誰かと一緒に見て…分かち合って、』


『それだけが特別で……幸せなんだと、思います』



きっと4年前の夏祭りで俺が聞き逃した彩の言葉は、それだったんだろうと。


救われたのは俺なんだよ彩、そして…涼夏。