ふにっと溶けてしまいそうで壊れてしまいそうな、それなのに全部がどうでも良くなってしまうくらい。



「…っ、…んっ、」



どこが噛む、だ。

なにが砕く、だ。


そんなのぜんぜん想像も出来ないくらい、甘くて優しくて。

不慣れに応えるわたしを包み込んでくれる。



「涼夏、…お前なら大丈夫だよ」


「大丈夫じゃ…ない、です…っ」


「お前だけは、彩みたいになってほしくない。だから…俺を頼らず生きるんだ」



頼らないで、自分の力でやって。

俺はもう傍に居ないよ?



「涼夏は、大丈夫」



一見それは突き放した言葉なのに、先輩は「大丈夫」って一言で最後を締めくくる。


ちゅっと優しく齧られて、ぎこちなく応えて。

甘いキスの中でぎゅうっと閉じた目を開けば、何よりも優しく見つめてくれているから。



「この髪でいてよ、ずっと。いざとなったら男の子に紛れちゃえばいい」


「…そんなの、むりです」


「…はは、確かに。こんなに女の子の顔してるもんね」



先輩の潤んだ瞳の中には、涙目で微笑んでいる見たことない女の子がいた。



「…困るよ、そんな可愛い顔されたら」











とある先輩の、歪んだ決意。