「い、言わなきゃ駄目かな? 記念日とかにしない?」
「今日は付き合って54日目の記念日だよ」
「え、えっと……そんなに聞きたいの……?」
「聞きたい、瑞香が嫌でも絶対聞きたい。……何してでも聞くよ、俺は」
日野くんの声がまた低くなって、胸がきゅっと締め付けられた。いつの間にか手を強く握られていて、視線を逸らしていくと「瑞香」と窘めるように呼びかけられた。
「……ま、マフィンです……よ」
「マフィン?」
「あの、その、調理実習の、マフィンを、佐々木さんのマフィン食べている時、私見てたの。それで、日野くんの、笑顔が、こう、ぐさっと心臓に、きて……そこから、徐々に、なんていうか普通の日野くんに対しても、好きだなって思うようになって……」
「本当に……?」
落とした視線を上げると、日野くんは予想外だったように口を少し開けてこちらを見ている。驚きで目を開いているところが少し幼く見えて、愛しさを感じると共に心が徐々に落ち着いてきた。しかし、彼が突然私の頬に触れてきたことでまた一気に心拍数が跳ね上がった。



