日野くんがベッドのすぐ近くにあるルームランプのスイッチに手をかけ、私は掛け布団を鼻の辺りまでかけるようにしながら頷く。今日はもう、眠れないかもしれない。心臓が激しく鼓動しているのを痛いほどに感じるし、今晩眠れる気が全くしない。
一方の日野くんはといえば、掛け布団を手に取りそのままベッドの中へと入ってきた。広いといえど一人分だから、すぐ近くに彼の熱のようなものを感じる。
駄目だ。離れないと死んでしまう。
少しずつ彼から距離を取っていく。目指すはベッドの縁だ。暗闇の中ぎりぎりを攻めるように離れていくと、不意に手をぎゅっと掴まれた。驚きで声も出ない私に彼がこちらに顔を向けてきたことが気配で分かった。
「手、握っててもいい? 五十嵐さんの手安心するから、握って眠りたい。よく眠れそうだし」
そんなことをされたら余計眠れなくなる。
でもどうせ今日私はどうなっても眠れないのだし、それなら日野くんがぐっすり眠れたほうがいい。
私は半ばあきらめたような気持ちで「いいよ」と返事をした。



