「ひ、日野くんちゃんと着なきゃだめだよ! 風邪ひくよ!」
「ん? 聞こえなかった。なんて言ったの?」
彼はどこか気怠げな目つきでゆっくりとこちらに近づいてくる。私は彼の上着を盾にするように一歩後退した。
「前を、閉じて! 風邪ひいちゃうから!」
「……ああ。でもちょっと暑くて」
「えっ、ごめん設定温度高くしすぎたかも――……っ、日野くん!?」
盾代わりにしていた上着を下げると、日野くんが想像よりずっと私の近くにいた。目を背けると彼は「なんで五十嵐さん俺のこと見ないの?」と心底不思議そうに問いかけてくる。
「だ、だって前開いてるし、と、とにかくえっと、今は無理だよっ」
「何で? 別に俺のこと好きじゃないんだし別に良くない?」



