声が震えないよう、気付かれないようすぐにリビングを後にする。そうして扉を閉じた時、瞳からぽたりと涙が伝った。



 日野くんは傷ついている。お母さんとお父さんは死んじゃって、義理の両親に酷い目に合わされて。そうして一人で頑張って生きてきたんだ。だから辛いのは彼だ。



 ――普通人に好きって言ってもらえると嬉しいんだと思うけど、キモいなーって思っちゃうんだよね。



 なのに、笑いながら話をしていた日野くんの言葉が頭から離れない。ずきずきと胸が張り裂けそうに痛くて、今まで見ないふりをしていた自分の気持ちがはっきりと分かった。



 美味しいという声を聞いて、笑う顔を見て幸せを感じる。触れられて落ち着かなくなる。見つめられると心臓が激しく鼓動する。それは、全部――……私が日野くんのことを、好きなせいだ。