「ああ、仲悪いとか家族関係複雑系じゃなくて、俺の小さい頃に死んでるだけだから、心配しないで」



 さっき、佐々木さんの停学を伝えた時と同じように抑揚のない声で日野くんは付け足してきた。けれどあまりに壮絶な内容を困ったように笑って話す彼に私は愕然とした。



「そんな……」



「泣きそうな顔しないでよ。俺の首も据わって無い頃で顔も分からないし、親が死んだってのが当然だったから別に悲しいとかもないから。それに俺、親っていう存在自体好きじゃないし。寂しいとかないよ?」



 けらけらと、笑い話のように話す彼の言葉に、次の言葉が紡げない。



「次の義理の父親と母親っていうか、母親がどうしようもない感じでさあ。俺血が繋がってないって言っても息子なのに、好きだーとかやってくんの。結局病気ですぐ死んだんだけどそれで義理の父親もしんどかったみたいで、俺に慰謝料渡して家渡して自分は地方の山籠ってるんだよね。だから今が一番気楽だよ。とっても元気」