「ええ、そんなことないよ。きっと篠宮くんの両親も心配すると思うからなるべく早く帰らないとね!
あ、ご飯食べて帰るって連絡した?」
そう尋ねると、さっきまでにこやかだった篠宮くんの顔から笑みが消えた。
「必要ないよ。アイツらは俺が風邪をひいて熱を出そうがどうでもよくて、俺より兄貴の方が大事なんだから…………今のは忘れて」
一瞬悲しげに目を伏せた後、
作り笑いをしてみせる。
そんなこと言われたら、どうしても気になるよ。
今の発言からすると、親との関係がよくないってこと……?
「……くしゅっ!」
詳しく聞きたいけど、服を貸してあげるのが先だ。
んー、結音のは当然着られないし、
お父さんの服しかないな。
「篠宮くん、服が乾くまでお父さんのスウェット着ててほしい。煙草の匂いとかはないから安心して!」
「分かった。どこで着替えたらいい?」
「弟の部屋、後で案内するよ」
今ご飯食べてるから、ちょっとの間部屋借りても何も言わないでしょ。
篠宮くんはまだ使ってない方のタオルを取ると、私に渡す。
「人の事ばっか気にしてないで、倉科も濡れてるんだから拭けよ。」
「あっ……そうだったね、忘れてた」
とにかく篠宮くんをなんとかしてあげたいって一心で、自分も水かけられたことがすっかり頭から抜け落ちてたよ。
今更になって、体がすごく冷えてきた。
お風呂入ってあったまりたい!


