「なにそれ。経験してるかしてないかの差だろ?
倉科もその内慣れたら、恥ずかしいともなんとも思わなくなるから」
だから、大丈夫だって言いたいの?
「慣れるとか慣れないの問題じゃなくて!私は他の女子みたいに、カッコよかったら誰でも良くない。ちゃんとお互いが好きだって確認してからしたいの!」
「俺は好きだよ、倉科の唇」
唇じゃなくて心の話ね?
「今まで瑞季が女子とキスしてるとこなんてどうでもよかったのに、倉科としそうになったの止めたの何でだと思う?」
「そんなの知らないよ……」
今すぐ帰りたくて少しイライラしてたら、篠宮くんが私の目をまっすぐ捉えた。
「倉科に俺以外の男のキスを知って欲しくなかったからだよ」
真剣な口調で言うものだから、またドクンと心臓がうるさく鼓動するけど、すぐに冷静になる。
その台詞で私の心を射止められたと思ったら、まったくの見当違いだ。
好感度が-100くらいに下がってるから余計に響かないよ。
「その顔、信じてないみたいだね。無理もないか」
うーんと考える素振りをしてから、名案だとでも言う風に突拍子もないことを言い出す。
「じゃあ、俺が倉科の為に役に立ったり、良いことをしたらさせてくれる?さっき、数学を教えたから1回させて」


