篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。


 
すごい、すごいよ!!


さっきまでの暗いテンションはどこへやら、興奮がとにかくやばくて窓から身を乗り出しそうになる。


そして、1番前を走ってる3年生のすぐ後ろに篠宮くんが辿り着いた。


……そういえば、あの人は確か陸上部のキャプテンだって綾羽から聞いた気がする。


実際とても速くて、篠宮くんはじりじりと追い上げるけれど、なかなか並ぶことが出来ない。


それでも、最後まで奇跡を信じたい。



「しのみやくん!最後までがんばって!
大好き!!」


誰にも聞こえないからいいやと思い、応援と一緒に思いの丈をぶつけてみる。


つい勢いで言っちゃったけど、やっぱ恥ずかしい。

誰も聞いてないはず、だよね!?



ゴールテープまであと10メートル付近で、篠宮くんはさらにスピードを上げ、そのまま3年と並んで、追い越し、そのまま1位でゴールした。


やったぁ、1位だ~っ!!


あまりにも嬉しくて、柄もなく飛び跳ねて喜ぶ私。


隣に綾羽がいたら、絶対手を取り合ってキャーキャー言ってたよ。


グラウンドから届く大歓声を聞きながら、ぎゅっと両手で心臓を押さえた。



「……篠宮くん、」


こんなカッコいいとこ見せられたら、ますます好きになるしかないね。





私が走った訳でもないのに、心臓がドクドクと鼓動しっぱなし。


少女漫画のヒーローのような逆転劇を演じてみせた篠宮くんに、キュンキュンにときめいて……少し、泣きそうになる。



ああ、ほんとにもう……



「かっこいい、なあ」


かっこよすぎて、苦しいほどだった。