自動販売機のボタンを押して、ガコンと取り出し口から缶のオレンジジュースが落ちてくる。
かろうじて買ったジュースを取り出し、それを握り締めながら人目のつかなさそうな場所に移動した。
どれだけ走っただろうか。
途中で息苦しくなって足が止まり、膝に手を置きながら呼吸を整えてから、ふと握り締めていたジュースに視線を向けた。
握り締めていたのは、ブラックコーヒーだった。
押し間違えたんだ。
「……あはは、飲めないじゃん。もったいない」
意味もなく、乾いた笑いが漏れる。
仕方なくプルタブを引いて、ひと口だけ飲んでみた。
「……にがっ!」
やっぱりお子様舌の私にはブラックはまだ苦くて、にがくて、くるしいよ。
……まあ、篠宮くんは見た目も中身も間違いなくイケメンだし、文武両道で非の打ちどころがないから
誰もが付き合いたいと思うのは当たり前なんだよね。
さっきの花澤さんの言葉が頭の中でずっとリフレインして、篠宮くんは一体なんて返事をしたんだろうと気になる気持ちが止められない。
深く吐いた息からわずかに香るコーヒーの香りに、どこか虚しさを感じたのだった。


