虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい

 これまでは気をつけていたのに、とうとう穴に足を滑らせてしまった。

 こぼれ出た悲鳴が響き、獣が歓喜したように再び吠える。

 宙に投げ出された身体は重力に従って落ち、硬い壁にぶつかり、擦れながら転がった。

「う……」

 ようやく地面に辿り着くも、無数の傷による痛みのせいでもう起き上がれない。アルトリシアは地面に伏したまま、なおも助けを求めるように弱々しく手を前に伸ばした。

 土埃で汚れたその手にこつんと硬いものが触れる。端の欠けた蒼い石を見て、アルトリシアは無意識にそれを握り込んだ。そして、必死に祈る。

(助けて。助けて。助けて……!)

 もし、魔石を扱えたなら。